トマトの赤は健康色健康お役立ち情報 トマトの赤はリコピンのしるし トマトは現在世界で一番作られている野菜で、ヨーロッパでは「トマトが赤くなると、医者が青くなる」ということわざがあるほど栄養満点の食材として知られています。その秘密は「リコピン」という赤い色素。抗酸化作用が強く、その作用はβ-カロテンの2倍以上、ビタミンEの100倍以上ともいわれています。トマトの魅力・活用法を知って、おいしい健康生活に生かしましょう。 リコピンの健康パワーとトマトの魅力 リコピンパワー1:「健康維持」に 強力な抗酸化作用によって、腸や血管をきれいにし、体を若く保つ働きがあります。また、最近はリコピンによる生活習慣病予防効果の研究が進み、悪玉コレステロールの酸化を抑制して動脈硬化を予防したり、血糖値や血圧の上昇を抑えたりする効果も期待されています。 リコピンパワー2:「紫外線対策」に リコピンはシミのもととなるメラニン色素の生成を抑制し、夏の紫外線対策におすすめです。また、シワやたるみの原因となる活性酸素を除去し、新陳代謝のアップにも役立つといわれ、美容面への効果も注目されています。 リコピンパワー3:「肥満予防」に リコピンは脂肪細胞の働きを抑制することが知られています。また、最近の研究によってトマトには中性脂肪燃焼に有効とされる成分 「13-oxo-ODA」(ジュウサンオキソオーディーエー)が含まれていることが発見され、肥満予防効果が期待されています。 リコピンパワー4:「疲労回復」や「脳の健康」にも リコピンの抗酸化作用にはほかにもさまざまな健康効果があるとされています。疲れのもととなる活性酸素を除去し疲労の回復を助けるほか、脳の神経細胞の酸化を防ぎ、老化を遅らせる効果が期待できるといわれています。 ●バランスのよい栄養成分 トマトにはリコピンのほかにも、ビタミンC、Aが多く、カリウム、整腸作用のあるペクチン、ビタミンB6など、さまざまな栄養素がバランスよく含まれています。 ●うまみ成分「グルタミン酸」 トマトに含まれるグルタミン酸はアミノ酸の一種で、昆布や味噌、醤油にも含まれるうまみ成分。ヨーロッパでトマトが調味料の1つとして使われる理由はここにあります。 リコピンはどのくらい摂ればよい? リコピンの効果を期待するには、1日に15mg以上の摂取が効果的だといわれています。15mgを摂取するためにはどうすればよいのでしょうか。 ●トマトには赤とピンクがある トマトの系統は大きく分けて2種類あり、日本でよく食べられているのは「ピンク系」トマト(桃太郎など)。皮が薄く、果肉が柔らかいので生食向きです。一方、世界の品種の大半は「赤系」トマト。味が濃厚で加熱するとうまみが増し、これらは主に加工用。リコピンの含有量はピンク系の約3倍。赤系の代表種はイタリアントマトやミニトマトなどです。 ●リコピン15mgどのくらい? ピンク系トマトは100gあたりリコピンを2~3mg含むといわれ、15mg摂取するには1日約500gのトマトが目安。リコピンはトマトジュースやケチャップなどの加工食品に多く含まれます。 口においしい 体においしい いつでもトマト活用術 リコピンをはじめ、栄養成分のバランスが優れたトマトを日常的にたっぷりおいしく食べるための「活用術」をご紹介します。 準備編 調理の前からトマトの上手な使い方ははじまります。「おいしく」トマトを食べるためのコツを押さえておきましょう。 ●おいしいトマトの選び方 トマトは見極めが難しい野菜とされています。ポイントは3つ。①丸くてずっしりと重みがあり、皮にハリ・ツヤがあるもの。②ヘタやヘタの切り口がみずみずしく緑色のもの。③お尻部分の星形の線がはっきりとでているもの。赤色が濃くて鮮やかなものはよく熟しています。 ●相性のよい食べ合わせ 抗酸化作用を持つビタミンA、C、Eを含む食材と一緒に食べると、相乗効果でリコピンの抗酸化作用もアップします。パプリカやゴーヤ、ほうれん草などと相性がよいといえます。きのこは免疫力をアップさせる効果があるほか、うまみ成分の相乗効果も期待でき、おいしく食べられます。肉や魚も同様にうまみ成分が豊富なので、うまみが増します。 ●リコピン吸収率アップの調理法 リコピンは熱に強く、加熱したりみじん切りや、すりつぶすことで体内に吸収されやすくなります。また、油と一緒に摂取すると吸収率がアップします。オリーブ油やえごま油、乳製品の脂肪分と一緒に食べると効率よくリコピンを摂ることができます。 ●体を冷やすトマトの力 トマトは、薬膳では熱をとる野菜であるといわれ、水分の豊富さからも、昔から夏の時期の健康食でした。冷え性の人は、加熱調理をして食べる、とうがらしやしょうがなどの体を温めるといわれる食材と一緒に食べるといった工夫をしましょう。 実践編 毎日しっかりリコピンを摂るために、調理法のバリエーションや、いつでも手軽に使える保存方法を組み合わせましょう。 ●生で食べる トマトは日持ちの関係から、完熟前に収穫されることが多くあります。収穫後も20℃以上の環境で色づく性質があり、熟していないトマトは、常温で保存すると追熟します。追熟を止めたいときは冷蔵庫へ。ただし、長期間冷やしすぎると味が落ちるので注意しましょう。 ●おやつにミニトマト 甘みが強い品種が多く栽培され、フルーツ感覚で食べられるものが多くなってきました。さらに、糖質が比較的少なく栄養も豊富なため、ダイエット中の間食などにおすすめです。常温でも持ち運べるため、ミニトマトのパックをカバンに入れておやつ代わりにする人も。 ●長期保存に冷凍トマト 冷凍すると、1ヵ月程度は保存することができ、冷水に浸けるだけで簡単に皮をむくことができます。使いやすい大きさにカットして冷凍保存袋に入れるだけ。ミニトマトの場合はヘタを取って洗ってからそのまま冷凍保存袋に入れて冷凍庫へ。 ●冷凍トマトはそのまま使える 冷凍保存したものは、加熱調理やスムージーなどにそのまま使えます。ジュースに使うときはオリーブ油などを少しだけ垂らすとリコピン吸収率がアップ。さっぱり食べられるトマトシャーベットは、冷凍トマトをおろし金ですりおろし、はちみつなどをお好みでかけるだけ。 ●万能調味料のトマトソース イタリアなどではトマトが安い時期にまとめ買いをしてソースを作り、いつでも使えるようにストックしているそうです。パスタやスープ、炒め物などに調味料感覚で使えます。 ■作り方 オリーブ油でにんにくを炒め、香りを移しておく。湯むきしてざく切りにしたトマトを入れ、30分ほど煮込んでから塩、コショウで味を調える。玉ネギや肉はお好みで。熱湯消毒した密閉容器や冷凍保存袋に入れ、冷蔵庫で2週間程度、冷凍庫なら2ヵ月程度保存が可能です。 ●栄養凝縮ドライトマト ドライトマトは料理のアクセントになる万能トッピング。さらに、栄養やうまみが凝縮されています。 冷蔵庫で2週間、冷凍庫で3ヵ月程度保存が可能です。 ■作り方 ミニトマトを半分に切り、塩を振り数分置く。ペーパータオルにトマトの断面を下にして数分置き、水分を拭き取る。オーブンシートを敷いた天板に、断面を上向きにして並べ、120℃に予熱したオーブンで90~100分程度焼き、水分を飛ばす。仕上げに天日で1時間ほど干す。 <取材協力>日本野菜ソムリエ協会ビューティーフードプログラム監修 管理栄養士 岸村康代さん<参考文献>『からだにおいしい 野菜の便利帳』(板木利隆監修/高橋書店)『毎日おいしい トマトレシピ』(タナカトウコ監修/新星出版社)『いちばん体に効く野菜の教科書』(本橋登監修/主婦の友社)『オールガイド五訂増補食品成分表 2011』(実教出版)<Webサイト>『トマト大学』(カゴメ株式会社)『セレブ・デ・トマト』<イラストレーション>福々ちえ