1日30分 速歩きの始め方

10分×3回でもOK
電車通勤なら一駅分歩く、車通勤なら昼休みに歩く、買い物のときに意識して歩くなど、週5日、1日30分の速歩きを取り入れてみませんか。30分連続して歩かなくても同様の効果が得られるとされます。15分を2回、10分を3回など、ライフスタイルにあわせて調整しましょう。

週2回なら60分
週5日実施するのが難しい場合は、土日など休日を利用して、約60分の速歩きを週2回行えば、30分の速歩き4回分に相当します。この場合も、60分連続して歩く必要はありません。朝と晩にウォーキングの時間を設けて、30分ずつ歩くのもよいでしょう。

1キロ10分が目標

健康づくりに役立つ速歩きのスピードは、年齢や性別を問わず、95~100m/分とされています。1キロをおよそ10分で歩く速さです。今まで運動をしなかった方が急にこのスピードで歩くのは体に負担がかかるので、無理せず少しずつスピードを上げていきましょう。

4メッツ(※)の運動で健康に

「速歩き」は4メッツの運動です。中強度の強さの運動、ニコニコペースの運動ともいわれ、続けることで、糖や脂質の代謝が活発になり内臓脂肪が減少するため、生活習慣病予防に有効とされています。循環器疾患や脳血管疾患の発症予防に効果的という報告もあります。

※メッツとは?…「メッツ」は身体活動の強度を表す単位で、安静時の酸素摂取量3.5mL/分(体重1kgあたり)に対して、歩く、走る、自転車に乗るなどの何らかの身体活動を行ったとき、何倍の酸素を必要とするかという基準から算出されています。

2種類の運動が効果的

ダイエットや健康増進には、速歩きのような有酸素運動と、筋トレなどの無酸素運動を組み合わせて行うと効果的とされています。週5日の速歩きと並行して、腹筋運動・腕立て伏せなど「軽い筋力トレーニング」を1日15分程度取り入れると、さらに効果が期待できます。

【速く歩くだけで、運動になります】
運動不足は体によくないといわれますが、デスクワークや車移動が当たり前の現代、運動不足は避けられません。また、運動の時間がとれない方、もともと運動が好きではない方も多いのではないでしょうか。しかし、ゴルフやテニスのように技の上達をめざすスポーツばかりが運動なのではありません。意識して速く歩くだけでも、立派な運動になるのです。

【そもそも、健康に必要な「運動」とは?】
私たちの身体活動には生活活動と運動があり、運動は、「身体活動のうち、体力の維持・向上を目的として計画的・意図的に実施する身体の動き」と定義されています。歩く動作なら、目的なくぶらぶら歩くのは「生活活動」ですが、意識してスピードを上げてサッサと歩けば「運動」になるのです。今日からでも始められる速歩き、さっそく取り入れてみませんか。

健康づくりのために必要な身体活動量は週に23エクササイズ。そのうち運動は、週に4エクササイズ(速歩きなら60分)、メタボ対策には、10エクササイズ(速歩きなら150分)必要とされています。

歩きは速く、健康づくりはゆっくりと

運動は続けてこそ効果が得られるもの。目標設定はゆるやかに、長い目で見て続けていきましょう。

歩き方

【さあ、歩き始めましょう】
歩くときのフォームに細かい決まりはありませんが、できるだけ背筋を伸ばすこと、そして歩幅を大きくすることを心がけましょう。両手が空いた状態なら、手を振って歩くことで上半身の運動にもなります。

●●●ウォーキングとジョギングの違い●●●
ジョギングも有酸素運動ですが、運動初心者や高齢の方にはあまりおすすめしません。その理由は、両足が浮いた状態から着地するためひざや腰に負担がかかりやすい点にあります。歩く動作では、いつも片足が着地しているので、ジョギングに比べ負担が少ないのが特徴です。

【通気性のよい服、歩きやすい靴で】
汗を吸い取り熱を発散できる素材のものを着て歩きましょう。サウナスーツのようなウエアは熱がこもってしまい、熱中症の原因になるので避けましょう。ハイヒールは足に負担をかけるだけでなく、転びやすく危険です。速歩きのときは履き替えるなど工夫しましょう。

【体調管理をしながら歩く】
一度に30分、60分など時間をとって歩く場合、熱中症を予防するため、こまめに水を飲むようにしましょう。炎天下では特にご注意ください。体調が悪いときは無理をせず休みましょう。また、糖尿病の治療中の方は、空腹時に歩くと低血糖を起こしやすいため注意が必要です。

●●●治療中の方は医師に相談●●●
糖尿病のほか、内臓疾患、ひざや腰を治療中の方など、疾患や病状によっては運動に制限がある場合もあります。運動を始める前に必ず主治医に相談しましょう。

【歩いたあとはストレッチ】
歩く前、歩いたあとに5分ずつくらいストレッチをするとよいでしょう。運動前後のストレッチは、筋肉の柔軟性を保ち、筋肉痛を軽減するのに役立ちます。ラジオ体操のように、さまざまな動きが取り入れられた運動をするのもおすすめです。

続け方

【日常生活に取り入れる】
1人でできて、いつでもどこでも始められると運動を継続しやすくなります。「速歩き」は通勤や買い物など普段の移動で行い、「軽い筋力トレーニング」は、腹筋運動や腕立て伏せ、スクワットなど、テレビを見ている間などに行うようにすると無理なく続けられます。

●●●運動の回数を増やすとおトク●●●
速歩きのような有酸素運動を行うと、運動後に仕事や家事などに戻って安静にしていても運動の効果がしばらくゆるやかに続いていくことが知られています。つまり1日のうちに何回も「運動」すると、運動後に安静状態へ戻るまでの回数も増え、それだけ酸素を多く消費する=エネルギーを多く消費する時間が長くなるということ。日頃からこまめに積極的に動くよう心がけましょう。

【完璧をめざさない】
速歩きのスピードの目標は1キロ10分、週5日。しかし、体調や予定によってできない日があってもかまいません。努力することも大事ですが、休息も大事。1週間前、1カ月前と比べて歩く機会が増えていれば良しとして、少しずつ運動のある生活に慣れていきましょう。

【生活の記録をつけてみる】
生活習慣病の予防・治療では、食生活や運動習慣を見直すことが大切といわれます。そこで、まず自分の生活を記録して、客観的に把握することをおすすめします。食事の内容や、飲酒量、喫煙の有無、運動量など、少しずつでも改善できるところを探ってみましょう。

【間食や嗜好品の食べ過ぎをチェック】
運動しても、その分食べていては効果が上がりません。かといって食事を抜くなど食べないダイエットは栄養が不足するのでおすすめできません。食事を減らすのではなく、惰性で飲んでしまうお酒やジュース、ついつまんでしまうお菓子などから見直してみましょう。

[食べたエネルギーを消費するには、これだけの速歩きが必要]

ビール大びん1本(250kcal)…速歩き50分
日本酒1合(200kcal)…速歩き40分
缶コーヒー 250ml(100kcal)…速歩き20分
カップアイス(450kcal)…速歩き90分
ポテトチップス 1/2袋 30g(200kcal)…速歩き40分
※体重70kgの人の場合。速歩き15分で消費するエネルギーを74kcalとして計算しています。めやすとしてご覧ください。

歩くと体にうれしい効果
内臓脂肪の減少や、血糖値・血圧の正常化に役立つといわれるウォーキング。ほかにも、さまざまなメリットがあります。

【足腰を丈夫にして、転倒予防】
歩く動作によって、大腿筋など、脚の大きな筋肉を鍛えることができます。反対にあまり歩かない生活をしていると、足腰を支える筋肉が衰えてしまいます。10年後、20年後も自分の足で歩くため、転倒を予防するために、ぜひたくさん歩きましょう。

【脳の活性化】
ウォーキングの習慣がある人は、ない人に比べて認知症や認知機能障害を発症するリスクが低いという報告があります。さらに、歩くスピードが速い(80m/分 以上)女性は、脳卒中のリスクが低下するというデータも発表されています。

【歩いて内臓脂肪を減らそう】
◆内臓脂肪とは?

糖尿病や高血圧、脂質異常症などのリスクを高めるとされる内臓脂肪。内臓脂肪から分泌される物質が、糖や脂肪の代謝を妨げ、動脈硬化を進行させることが明らかになってきています。

◆皮下脂肪との違い

内臓脂肪は摂取した過剰なエネルギーを一時的にためておく役割、皮下脂肪は内臓を守る、保温などの役割を持っています。男性は内臓脂肪が、女性は皮下脂肪がたまりやすい傾向にあります。

<取材協力>
日本体育大学教授 医学博士 大野誠先生<参考文献>
『肥満症の生活指導』(大野誠著/医歯薬出版)
『図解でよくわかる メタボリックシンドローム』(和田高士著/保健同人社)
循環器病情報サービスHP「運動で循環器病予防」
日本生活習慣病予防協会HP「ウォーキングが女性の脳卒中リスクを低下 米国で4万人を調査」

<イラストレーション>
山口絵美

Scroll Up